
私の好きな名作児童文学の世界を読み解いていきます♪
点と点が繋がる瞬間が好きです。
今回は、『物語のティータイム お菓子と暮らしとイギリス児童文学』のおかげでその瞬間を得ました。
この本でも取り上げている『秘密の花園(The Secret Garden)』が私は大好きなのですが、
大好きな理由として、物語の舞台となるヨークシャー地方の広大な荒野(=ムーア)の自然描写が素晴らしい点があげられます。
『秘密の花園』はインドで暮らしていた主人公のメアリーが幼くして両親を失い、イギリスにいる伯父の元に引き取られる事から始まります。その屋敷はヨークシャーの荒涼としたムーアの外れにあり、冬の夜に馬車に揺られて初めてムーアを通過したメアリーは、黒々とした恐ろしく果てのない海の様に感じます。
見渡す限り続く荒野に轟轟と吹き荒れる風。ムーアは最初、人を寄せ付けない荒地の如く描写され、主人公のメアリーも登場時は性格の捻じれた”つむじ曲がり”な子として描かれています。
しかし、一見荒涼としたムーアの自然は実に豊かで、ムーアの中でそこに暮らす人々と過ごすうちに、メアリーと従兄弟のコリンの捩れた心はだんだん素直になり身体も健康を取り戻していきます。
謂わば、自然によって人が癒され元気を取り戻す、再生の物語なのです。
屋敷の女中マーサの言葉を借りれば「ムーアに咲くヒースのなかで1日を過ごせば百日咳も治る」し、「私はムーアから離れた所になんか住みたくないね!」と言う程、ムーアはこの地域に暮らす人々の拠り所です。
ムーアに春が訪れ、ヒースやハリエニシダの花が一面紫の絨毯の様に咲く頃になると物語はさらに魅力的に加速するのですが、ここでは割愛します。
今回繋がった点は、想像の中にしかなかったヒースが、エリカの花(エリカは和名)だったと判明したことです。
エリカは常緑のかん木で、小さな釣鐘状の花をたくさんつけます。
日本でも庭木として用いられますが、見渡す限り続くエリカの風景は限られた場所に行かないと観れません。(北海道にある個人ガーデン、陽殖園のエリカの山が有名です。)
では、自生地イギリスでのエリカ=ヒースはと言うと、花が美しいだけでなく、人々の暮らしを支える植物だと、今回読んだ本に記してありました。
藁葺き屋根やベッドのマットレスに用いたり、床を掃く箒として使われたり、その繊維からロープを作ったり、色を抽出して毛織物の染料になったり。また、羊にとっての食料でもあり、エールビールの風味づけに使われたり、ヒースの花から採れる蜂蜜はヨーロッパで最上品なんだとか。
そして、ヒースが枯れた後、堆積して作られる泥炭=ピートがこの地域の台所で燃料として長年使われてきました。(同じヒースの花咲くスコットランドではピートのおかげで風味豊かなウヰスキーができます。)
ヒースはまさにイギリス文化に無くてはならない植物だったのです。
また、ブリテンではヒースと呼ばれますが、イングランド北部やスコットランドではヘザーと呼ばれます。
イギリスの女性名にあるheather(ヘザー)と、亡くなって暫く経つけれど好きだったオーストラリア出身の俳優Heath Ledger(ヒース・レジャー)は、どちらもこの植物にちなんだ名前なんだと気づき、
つくづくヒースがどれだけイギリスの人々の暮らしに重要で、愛されているかが伝わってきました。
ヨークシャー地方のムーアは現在、国立公園になっていてトレッキングコースもあるようなので、いつか一面に咲くヒースの花絨毯の中を歩いてみたいという夢も生まれました。




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