
数年前映画館で観た『AALTO』がAmazonプライムにも登場していました♪
映画『AALTO』
アイノ・アアルトとアルヴァ・アアルト。フィンランドを代表する巨匠夫妻は、私の大好きな建築家で家具デザイナーです。アアルトの名前を知らないない人でも不朽の名作であるスツール60を見れば、「あぁ、アレね」と瞬時に理解できるのが、時を経ても色褪せない彼らのデザインの凄さです。
本作はアルヴァ・アアルトの人生を辿ったドキュメンタリー作品で、彼らの残した多数の作品、友人や家族との手紙、残されたインタビューや写真等を再構成し、人間性に迫るというものでした。
映画を観て初めて知り驚いたことが多数あり、アルヴァ・アアルトのイメージが変わったのは言うまでもありません。
1番新鮮に感じたのはアルヴァの二人目の妻エリッサについてです。日本ではアアルト夫妻と言えば、最初の妻アイノを意味するので、2番目の妻エリッサがどんな人物だったのか、これまで知る由がありませんでした。
アイノ亡き後、アルヴァが見染めたエリッサもまた、アイノと同じく優秀な女性建築家でした。そしてアイノと同様に公私ともにアルヴァをサポートします。
アルヴァが人生の伴侶に求めたものは、自分の考えを理解し右腕となって動いてくれる人物だったので、なんともハイレベルな要求だなぁと感じました。
また、2人の妻の功績が、アルヴァの華やかすぎる影に隠れていて中々スポットが当たらない点も遺憾が残ります。
次に驚いたのが、あの時代を代表する一流のクリエイター同士の交流の多さです。コルビュジエやフランク・ロイド・ライトと親交があり互いに影響を受けていたことは知っていましたが、グロピウスやモホリ=ナギとも交流があり、アアルト建築で多様された照明計画がモホリ=ナギ作品からインスパイアされたものだと知り、驚きました。
アアルト最大の強みは、同時代と過去の一流に触れ貪欲に吸収しながらも、ホームリーで素朴な美を好むフィンランド人としての矜持を通してアウトプットできる点だと思います。
アアルト建築はコルビュジエに影響を受けていますが、コルビュジエにはない、包まれるようなあたたかさを感じる内部空間が魅力です。それはやはり故郷フィンランドの森に帰結していると思います。
コルビュジエが声高に宣言したインターナショナルスタイルは端的に言うと、「モデュロールに即し自分が作り上げたインターナショナルスタイルは完璧だから世界中どこへ行っても同じ原理原則の建築になる!」のですが、アアルトはその良い点を取り入れつつも、あくまでフィンランドの自然環境との調和に最も重きを置いています。中でも、夏と冬では全く異なる光と闇の中で暮らす北欧の叡智を反映させた光彩計画と、外へと緩やかに繋がる開口部の心地よさの演出は、ライトやコルビュジエより抜きん出ていると思います。
印象的だったことの3つ目は、オットー・コルホネンの偉大さです。
コルホネンは、アアルト夫妻と一緒にartek社を牽引した設計士で、アアルトと共にプライウッド技術を研究した凄腕の木工職人でした。アアルトが新しい現代的な木の家具をデザインし、コルホネンがそれを設計し卓越した技術で作り上げていくスタイルです。
アアルト家具を支えた縁の下の力持ちなので、アルヴァの2人の妻同様、その功績や人物像はアルヴァの影の中にあり、あまり伝わってきていません。
しかし、この映画ではコルホネンとアルヴァの関係にも焦点を当て、アルヴァにとって如何にコルホネンが大切な人だったかを描いていました。特に印象的だったのが、同時代を生きたクリエイターからの証言で、「コルホネンが亡くなるとアアルト家具に使われていた卓越した技術は姿を消した。アアルト家具の黄金期はコルホネンが存命だった時代までである」と、言い切っていた点です。
ここまで観てくると、アアルトとはアルヴァ1人の天才の事を言うのではなく、コルホネンや2人の妻、そして事務所のスタッフと、アルヴァを中心として活動していた複合チーム全体の事を表す固有名詞だと感じられました。
精力的で華やかな活躍している人のすぐ隣には、必ずそれを支えている人がいる。
支えている側の人の物語をもっと語り継いでいく世の中であってほしいと思った映画でした。



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